【2026センバツ分析】「答えは選手の中にある」——花咲徳栄・満塁エンドランの裏にある岩井監督のコーチング

 

The Answerより借用 https://the-ans.jp/news/658573/ 

普段、私は帝京高校の野球に注目して追いかけているのですが、今回のセンバツ1日戦、花崎徳栄 対 東洋大姫路の試合で、印象的な攻撃がありました。

それは8回裏、1点を追いかける花崎徳栄が、同点のチャンスを迎えた満塁の場面。2打席連続でヒットを放ち、2塁ランナーだった市村選手に対し、岩井監督が迷わず「代走」を送ったシーンです。 このシーンは、センバツLIVEの中継でも、実況や解説の方が「なぜここで代走なのでしょうね?」とその意図を測りかねているようなやり取りがあり、私も何がしたいのかな?と疑問を感じていました。

しかし、その直後に繰り出されたのが、あの「満塁エンドラン」でした。

遊ゴロの間に二塁走者までもが生還し、一気に2点を勝ち越した電光石火の攻撃。あの代走は、この一瞬の隙を突くための「準備」だったのだと気づかされました。帝京の正攻法の野球とはまた違う、緻密でアグレッシブなスタイルに興味を惹かれ、岩井隆監督の指導論を少し詳しく調べてみました。

そこには、私が現在学んでいるコーチングの根本思想に通じる、深い「人間への信頼」がありました。

■ ティーチングではなく「コーチング」としての関わり

岩井監督のコメントの中で、特に私の心に響いたのが「教えすぎない」というスタンスです。

「教えすぎるのは毒。選手が自分で『こうしたい』と気づくのを待つのが僕の仕事です。彼らの感性は、大人の理屈を超えていくことがありますから」 (出典:朝日新聞デジタル 2017年8月24日 優勝インタビュー等より構成)

これは、コーチングの「答えはクライアント(相手)の中にある」という原則そのものです。岩井監督は、一方的に技術を教え込む「ティーチング」や、選手の代わりに正解を提示する「コンサルティング」をしているのではありません。

選手が今、何を感じ、何をしようとしているのか。それを問いかけ、選手自身の内側から答えが湧き出るのを待つ。まさに「ヘッドコーチ」としての役割に徹しておられます。

■ 「責任は俺が取る」という心理的安全性

満塁のようなしびれる場面で、岩井監督は選手にこう声をかけます。

「アウトになっても、ライナーゲッツーになっても、責任はすべて俺が取る。お前たちは迷わず行け」 (出典:『Number Web』2017年8月22日「花咲徳栄、初優勝の原動力は岩井監督の『責任は俺が取る』」)

この言葉が選手に届くのは、監督が日頃から自分の采配ミスを潔く認め、選手に「完璧であること」を求めない姿勢を見せているからです。リーダーが自分の弱さや非を認めることで生まれる「心理的安全性」が、選手のチャレンジ精神を支えています。

■ 信頼が、選手の視座を劇的に引き上げる

今回のエンドランで、二塁走者が瞬時に状況を判断してホームへ突っ込めたのは、監督が日頃から「選手の可能性」を信じ切っているからです。

「数字は嘘をつかないが、高校生の心はそれ以上に動く。最後はあいつらの『やりたい』というエネルギーに乗っかるのが一番勝てるんです」 (出典:2019年 秋季関東大会後のインタビュー等、複数の取材談話より)

練習試合ではあえて「ノーサイン」で戦わせる時間を設け、選手に戦況を判断させる。こうした「権限委譲」を通じて、選手は監督に動かされる「駒」ではなく、自ら考えて動く「共創者」へと視座を高めていきます。

■ 私たちの日常に置き換えてみると

コーチングを学んでいて痛感するのは、相手を「信じ切る」ことの難しさと、その尊さです。

「信頼」とは、相手に丸投げすることではなく、相手が持っている可能性を誰よりも信じ、その結果を共に背負う覚悟を持つこと。花咲徳栄の選手たちが迷いなくダイヤモンドを駆け抜ける姿は、私たちリーダーに対しても、「メンバーの可能性をどこまで信じ切れているか」と、優しく問いかけているように感じます。



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